第2回 【腸内細菌のバランスの乱れが、喘息を悪化させるメカニズムを解明 】

2014年1月16日 プレスリリース
JST 課題達成型基礎研究の一環として、筑波大学の渋谷 彰教授らは、抗生物質の服用によって増殖した腸内の真菌(カビ)が喘息を悪化させるメカニズムを世界で初めて解明し、マウスを使った実験により喘息を軽快させることにも成功しました。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20140116/

抗生物質の多用による「耐性菌」の問題は広く知られるところとなりましたが、病気を悪化させるということが明らかとなりました。
腸内細菌は、今まで「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」と分類され、特に悪玉菌は体に悪い影響を及ぼすと考えられていました。
ところが、悪玉菌も健康に貢献しているということが明らかになってきたのです。

■悪玉菌にも役割
 遺伝子解析技術の向上で、これまで一部しか分かっていなかった腸内細菌の種類や働きの解明も進展した。善玉菌や悪玉菌の役割についても、これまでの常識にとどまらない発見がされている。

 例えばこれまで悪玉菌とされてきたクロストリジウム属菌は、免疫が働きすぎないようにするT細胞を制御する大切な役割をしている。しかも単一の腸内細菌ではなく17種類の細菌が協力してはじめて力を発揮する。理化学研究所と共同でこの働きを見つけた東京大学オーミクス情報センター長の服部正平教授は「腸内細菌が個別の働きではなく集団になることで役割を果たしている」と説明する。

 善玉菌の代表とされるビフィズス菌についても不思議なことが分かってきた。理由は未解明だが、日本人の腸にいるビフィズス菌は欧米や中国など海外に比べておよそ10倍と突出して多いのだ。

 ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー、糖尿病といった生活習慣病など腸内細菌のバランスの乱れが影響していると考えられる病気は少なくない。安倍晋三首相が最初の在任時に退く原因となった潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患もそうだ。

 病気によって腸内細菌の構成パターンに特徴があることも分かってきた。例えば糖尿病患者の腸内細菌の構成は、健康な人の腸内細菌とは異なる共通の特徴を持っている。腸とは無縁に見える自閉症などにも特有のパターンが見つかるという。「我々が思っている以上に様々な病気に関係している可能性がある」と服部教授は指摘する。

 こうした研究が進めば、将来、腸内細菌のパターンを調べることで病気になる危険性を診断できる可能性もある。病気治療に腸内細菌の力を生かそうという研究も始まっており、健康増進にとどまらない活用が期待できそうだ。

2014年3月18日 日本経済新聞(電子版)より引用

このように私たちの体の中では思いもよらない、バランス関係が成り立っているのです。
体の中での反応というのは1次的なものだけでなく、「抗生物質→真菌→ぜんそく悪化」と、2次的に起きるもの、3次的に起きるものなどさまざまで、さらに相互作用もあり、一つを切り取って「こうだ。」と簡単に言えるものではありません。

病気や体調不良は、痛みなどで辛いうえに、日々の生活に支障が出たりと、私たちにとっては都合の悪いものです。
しかし、「都合が悪い=健康面で有害」ではなく、抗生物質や薬を使うこと「都合がよい=健康面で有益」とは言えないということが、明確になったのではないでしょうか。

自分の体は生まれ出でて死ぬまで付き合うのは自分です。
運動などで体を使って楽しんだり、痛みを感じるのも自分、大切にするのもやはり自分でしかありません。
体が発するサインを見逃さず、健やかな日々を過ごしたいですね。